相続の教科書
法定相続分とは誰を指す?範囲・順位・確認時の注意点を解説
親族が亡くなると必ず必要となる相続手続き。さまざまな手続きがある中でも、「法定相続人」の範囲や順位については、複雑で頭を悩ませる人がたくさんいます。
法定相続人になる人の範囲はどこまでか。そして、相続割合はどのように決まるのかなど、相続の際に役立つ法定相続人に関する知識を分かりやすく解説していきます。
突然の訃報に戸惑うことなく、粛々と相続手続きを進められるように、遺産相続のキーパーソンとなる法定相続人を理解し、正しい手順を把握しておきましょう。
遺産を相続できる「法定相続人」
遺産相続を進める際、民法上で遺産を相続できる人の範囲が決められています。その決められた範囲に該当する人が法定相続人です。
遺産相続の方法には、遺言書がある場合の「指定相続」と、遺言書がない場合の「法定相続」があります。遺産相続の方法によって相続人の範囲と相続分が異なってくることにも注意が必要です。
法定相続人の順位と範囲
法定相続人になれる人は、被相続人の配偶者と被相続人の血族に限定されています。配偶者に関しては必ず法定相続人となるのもポイントです。また、被相続人の血族の中で法定相続人となる人には第1順位から第3順位まで、順位と範囲が決められています。
▼法定相続人の範囲と順位
優先順位 |
血族の種類 |
必ず相続人 | 被相続人の夫や妻。 |
第1順位 | 子ども。子どもが亡くなっている場合は孫(代襲相続)。 |
第2順位 | 両親等の直系尊属。 |
第3順位 | 兄弟姉妹。兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥、姪(代襲相続)。 |
必ず法定相続人となる「配偶者」
被相続人の夫もしくは妻は、最優先で法定相続人となります。婚姻関係を結んでいることが絶対条件となり、事実婚や内縁関係のパートナーは法定相続人としては認められません。
どんなに長年連れ添った関係だったとしても、法的な婚姻関係がなければ相続人としては認められないのです。遺産を受け取る相続人として認められるのは、配偶者と最も順位の高い血族相続人です。
【法定相続人】第1順位は、子や孫の直系卑属
法定相続人の第1順位は、直系卑属(ちょっけいひぞく) にあたる、被相続人の子どもとその代襲相続人(だいしゅうそうぞくにん)です。直系卑属とは、被相続人の血縁者であり、子や孫などが該当します。
元配偶者との間に子どもがいた場合、その子どもも第1順位の法定相続人となります。被相続人が亡くなる前に被相続人の子どもが亡くなり、孫がいる場合、孫が子どもに代わる相続人(代襲相続人)となります。
直系尊属が相続人として認められるのは、「配偶者あり・直系卑属なし」か「配偶者なし・直系卑属なし」の場合。もしくは、上位の相続人が相続放棄した場合です。
【法定相続人】第2順位は、親・祖父母の直系尊属
法定相続人の第2順位は、直系尊属(ちょっけいそんぞく)である父母や祖父母です。直系尊属とは、被相続人から見て直系の上の世代にあたります。
第1順位である子どもや孫がいない場合、第2順位の父母が法定相続人となります。父母が既に亡くなっていて祖父母が存命の場合は、祖父母が法定相続人です。
直系尊属が相続人として認められるのは、「配偶者あり・直系卑属なし」か「配偶者なし・直系卑属なし」の場合。もしくは上位の相続人が相続放棄をした場合が考えられます。
【法定相続人】第3順位は、兄弟姉妹・甥姪の傍系血族
法定相続人の第3順位は、傍系血族(ぼうけいけつぞく)となる兄弟姉妹と、その代襲相続人です。傍系血族とは、被相続人から見て同じ祖先から分かれた血族であり、兄弟姉妹や甥姪、伯父伯母などが該当します。民法上、伯父伯母は法定相続人にはあたりません。
第1順位、第2順位に該当する人がいない場合、第3順位が相続人として挙げられます。被相続人が亡くなる前に兄弟姉妹が亡くなっていて子ども(甥・姪)がいる場合は、甥・姪が代襲相続人となります。
ちなみに、被相続人が生前に養子縁組をしていた場合、その養子は被相続人の子として血族相続人第1順位に数えられます。相続では、実子と養子で相続分に差はなく、養子の人数にも制限はないのです。(相続税法上では、控除の人数計算の際に制限がかかります)。
法定相続分とは?
「法定相続分」とは、民法で定められた法定相続人の相続割合のことを指します。法定相続人の範囲と相続順位によって相続分は変わるので、間違って認識することがないように注意しましょう。
相続には「指定相続分」と「法定相続分」がある
法定相続人が複数いる場合、相続財産は相続人全員で按分(あんぶん)することになります。相続には、「指定相続分」と「法定相続分」があります。
【指定相続分】
亡くなった人が遺言によって相続分を指定したもの。法定相続分よりも優先されます。
【法定相続分】
民法で定められた相続分。どの相続人がどれだけ遺産を相続するのかの割合が定められています。相続人同士の遺産分割の話し合い(遺産分割協議)で合意ができなかったときに適用される遺産の分割割合なので、必ずこの割合で遺産分割をしなければいけないというわけではありません。
法定相続分の割合
法定相続分では、順位ごとに遺産分割の目安となる割合が設定されています。もしも、同順位の法定相続人が複数いる場合、その人数分で均等に分け合うことになります。
子どもが2人いたら、法定相続分1/2をさらに1/2で分け合った、1/4が子ども1人あたりの法定相続分になります。
▼法定相続分の割合
順位(組み合わせ) | 法定相続分 | 遺留分 |
1.配偶者と子ども |
1/2と1/2 |
1/4と1/4 |
2.配偶者と父母 |
2/3と1/3 |
1/3と1/6 |
3.配偶者と兄弟姉妹 |
3/4と1/4 |
1/2 |
4.配偶者のみ |
全部 |
1/2 |
5.子どものみ |
全部 |
1/2 |
6.父母のみ |
全部 |
1/3 |
7.兄弟姉妹のみ |
全部 |
なし |
※法定相続分、遺留相続分はその人数により均分しますが、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の1/2となります。
参照:法務局「法定相続人 (範囲・順位・法定相続分・遺留分)」
相続で最低限もらえる遺産「遺留分」
遺留分とは、法定相続人に最低限保証された遺産取得分をいいます。遺言書によって特定の人物に遺産の全てが贈られた場合でも、法定相続人の範囲に該当する人は、兄弟姉妹を除き遺留分を主張すれば必ず一定の財産を取得することができるのです。
相続権が剥奪される「相続欠格」
相続人の行動によっては、法律によって相続する権利が剥奪される可能性があることも覚えておきましょう。「相続欠格」は、民法891条で定められている相続人が、遺産を相続する権利を剥奪される制度です。
相続欠格が適用される場合の4つのパターンは、下記の通りです。
- 被相続人や他の相続人を殺害、もしくは、殺害しようとした場合。
- 被相続人が殺害されたことを知りながら、それを告発しなかった場合。
- 詐欺や脅迫を行うなどして遺言を妨げた場合。
- 遺言書を破棄・偽造・隠した場合。
相続欠格が適用されると、適用された相続人本人は一切の遺産相続ができなくなり、遺産の最低限の取り分である遺留分を受け取る権利さえもなくなってしまうのです。
ただし、相続欠格の適用を受けた人に子どもがいる場合は、その子どもが欠格者に代わって遺産を相続することができます。
法定相続人を確認するときの注意点
遺産相続の手続きは、法定相続人が誰かを特定することから始まります。相続は、被相続人の血縁者全てが対象となるものではないため、慎重な相続人調査が必要となります。
相続人調査には「戸籍謄本」が必須
法定相続人を確認する相続人調査は、被相続人が出生してから死亡するまでの出生事項や婚姻事項が記された「戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)」を取得して行います。
元配偶者との間に生まれた子どもや認知した子どもも法定相続人の対象となるため、戸籍謄本を取り寄せることで明らかにするものです。
戸籍謄本は、戸籍のある各市町村で取り寄せられます。交付方法は当該市町村役場または法務局へ問い合わせる必要があります。
その他、相続人調査をスムーズに進めるために欠かせない除籍謄本、改正原戸籍についても、どのような特徴があるのか、違いを理解しておきましょう。
預金相続の手続には「除籍謄本」が必要
除籍謄本とは、戸籍に入っていた全ての人が死亡や婚姻といった事情によって、その戸籍からいなくなって空になってしまった戸籍の写しを指します。つまり、その戸籍に属する人が一人でも存続していれば、除籍謄本にはなりません。
銀行での預金相続や証券会社の相続手続き、法務局の相続登記や税務署への相続税申告にも必要となる書類です。
相続手続きでは、故人である被相続人が除籍(=死亡)したことを証明できる謄本を求めているケースが多いのですが、それは全員がいなくなった除籍謄本の場合もあるのです。
古い戸籍を確認できる「改正原戸籍」が必要になることも
改製原戸籍(かいせいげんこせき)とは、1994年の法改正以前の戸籍のことを指します。現在の戸籍謄本は横書きですが、コンピュータ化される前の改製原戸籍は縦書きで記載されているため、ひと目で見分けることができます。
戸籍謄本には筆頭者と配偶者、二人の間に生まれた結婚していない子どものみが記載されているため、一世帯分の最新情報しか確認できません。法改正によって戸籍が切り替わる際、過去の身分情報が全て引き継がれるわけではないため、法改正前の離婚歴や子どもの認知、除籍や養子縁組の情報を調べるときには改製原戸籍が必要となります。
法定相続人がいない場合の対処法
配偶者や、第1順位から第3順位までの法定相続人、その代襲相続人さえいない場合もあります。法定相続人が誰もいないときは、民法上の「相続人不存在」が適用され、特別縁故者もいなければ、その人の財産は国庫に帰属することになります。
▼「相続人不存在」手続きの流れ
- 相続財産清算人の選任の申し立て
- 相続財産清算人の選任と相続人捜索の公告
- 債権申出の公告
- 相続人不存在の確定
- 特別縁故者への財産分与の申立て
- 残った財産は国庫に帰属する
法定相続人が相続放棄をしたら注意したいこと
法定相続人の中には、相続放棄を選択する人もいるものです。相続放棄をした人は相続人ではなくなるため、種類を問わず、遺産を承継しなくても良いことになります。
被相続人が高額の債務を抱えていた場合、相続するよりも相続放棄を視野に入れた方が良い場合もあるため、相続放棄はよくあるトラブル事例とも表現できます。
相続放棄をするためには、相続の開始を知った日から3カ月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。一度相続放棄をしてしまうと、申し立てを取り消すことはできません。
相続の放棄をした人は、最初から相続人ではなかったとみなされるため、代襲相続は発生せず、相続放棄をした人の子や孫も相続はできません。相続放棄があると、他の人が相続する割合に変化が生じる場合もあります。
配偶者と子ども一人が法定相続人のケースでは、子どもが相続放棄をすると、第1順位の存在がいなくなるため、下位に相続の権利が移ることになります。
法定相続人の確認は早めの準備が肝心
法定相続人とは、被相続人の財産を受け継ぐ権利があると民法上で規定された人を指します。法定相続人となる順番や相続の割合なども民法で定められているので、事前に確認しておけると安心です。
法定相続人を明らかにするためには、想像以上に複雑な手続きが求められます。中には、「被相続人の出生からの戸籍を確認したら、会ったこともない子どもがいた」というケースもあり、予想外の展開を迎える可能性もあるものです。意外と時間がかかる相続人調査には余裕を持って臨みましょう。
また、2024年4月1日からの相続登記が義務化され、3年以内に登記を行うことが法的に定められています。不動産の相続は複雑なケースが多いため、専門家のアドバイスをもらいながら、着実に手続きを進めることが大切です。
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