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相続手続き

相続税とは?基礎控除の仕組みから計算方式まで解説

相続税とは?基礎控除の仕組みから計算方式まで解説

相続とは、人が亡くなった際に財産を引き継ぐことを指します。日本の民法上では、人が亡くなったその瞬間から相続が発生し、亡くなった人を「被相続人」、財産を引き継ぐ人を「相続人」といいます。

それでは、親が亡くなってしまった場合に、遺産相続は何から始めるべきでしょうか?

相続のこと、相続税と基礎控除の仕組みについて詳しくご説明していきます。プロに相談する前に、身に付けているといつか役立つ知識の数々は必見です。

相続税の基本

相続税は、相続した金額が基礎控除額を超えた場合にかかる税金です。相続税が発生したのに申告をしないでいると、延滞税や加算税がかかってしまいます。

しかし、遺産を相続したからといって必ずしも相続税申告が必要というわけではありません。どのような場合に相続税申告が必要なのか、相続税の基本についてご説明します。

相続税申告は民法で定められた「法定相続人」が行う

相続税は、財産を相続した場合に必ずかかるものではありません。相続した財産の金額から葬式費用などを差し引いた後の金額が、一定の額(基礎控除額)を上回った場合に、相続税が課税されます。この相続税申告を行う人を「法定相続人」と呼びます。

法定相続人の範囲や法定相続分は、民法によって定められています。死亡した人の配偶者は常に法定相続人となり、配偶者以外の人は、次の順序で配偶者と一緒に相続人になります。

▼法定相続人の範囲と法定相続分

順位 法定相続人の範囲 概要 法定相続分
1位 死亡した人の子ども

その子どもが既に死亡しているときは、その子どもの直系卑属(子どもや孫など)が相続人となります。

子どもも孫もいるときは、死亡した人により近い世代である子どもを優先します。

配偶者2分の1

子ども(2人以上のときは全員で)2分の1

2位 死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)

父母も祖父母もいるときは、死亡した人により近い世代である父母の方を優先します。

第2順位の人は、第1順位の人がいないときに相続人になります。

配偶者3分の2

直系尊属(2人以上のときは全員で)3分の1

3位 死亡した人の兄弟姉妹

その兄弟姉妹が既に死亡しているときは、その人の子どもが相続人となります。

第3順位の人は、第1順位の人も第2順位の人もいないとき相続人になります。

配偶者4分の3

兄弟姉妹(2人以上のときは全員で)4分の1

参照:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」

相続を放棄した人については、最初から相続人でなかったものとされます。また、内縁関係の人は、相続人には含まれません。

日本国内に住所がある相続人は、相続財産がどこにあるかを問わず、全ての財産について相続税がかかります。国内に住所がない場合でも、相続した財産のうち、日本の国内にある財産だけに相続税がかかるので注意しましょう。

遺産総額が基礎控除額以下なら相続税申告は不要

相続税の計算で用いられる非課税枠のことを「基礎控除」といいます。相続財産の課税価格が基礎控除額を超えると相続税がかかり、基礎控除額以下である場合、相続税はかかりません。

相続税を計算するために、まずは相続税の総額を算出します。相続税の総額は、実際の遺産分割に関係なく、遺産総額や法定相続人の数・法定相続分を用いて算出されます。

【相続税の基礎控除額の計算方法】

3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

配偶者および1親等内の血族(被相続人の親・子ども※代襲相続人を含む)以外の者、または、被相続人の養子となった孫である場合は、その人が納付する相続税は通常の2割増となるので気をつけましょう。

相続税の対象になるもの、ならないものがある

相続税は、現金、預貯金、土地や建物といった不動産、株式や有価証券など、金銭に見積もることができる経済的価値のあるもの全てが対象となります。また、死亡保険金や死亡退職金など、亡くなった後に支払われるものも、相続によって取得した遺産とみなされ、「みなし相続財産」として相続税の対象になります。みなし相続財産には非課税枠があり、「法定相続人の数×500万円まで」は非課税です。

その他、相続開始前7年以内に贈与された財産や、相続時精算課税制度を利用して贈与を受けた財産も相続税の対象となり、贈与時の価額で加算されます。

逆に、墓地、墓石、仏具、仏壇など、相続税の対象にはならない財産もあります。借入金や未入金、未払いの税金などの債務は、相続財産の価額から差し引くことができるのでご安心ください。

葬儀費用も相続財産の価額から控除することはできますが、墓地や墓碑などの購入費用、香典返し、法要の費用は控除の対象外となります。

参照:国税庁「財産を相続したとき」

【期限別に紹介】相続手続きの5ステップ

相続手続きは、多岐にわたって作業があり、手続きごとに期限が決まっています。いつかは訪れる家族との別れで慌てることがないよう、相続手続きの流れを5つのステップでチェックしていきましょう。

遺産相続の全体の流れ

最初に、遺産相続手続きの全体の流れをご紹介します。被相続人の死亡直後から1年以内に必要な遺産相続手続の流れは下記の通りです。

▼なるべく早く着手すべきこと

  • 相続人、相続財産の確定
  • 遺産分割協議、遺産分割協議書の作成
  • 相続財産の名義変更や換金など

▼期限ごとに着手すべきこと

期限:7日〜14日以内

期限:3カ月〜4カ月以内 期限:10カ月〜1年以内
死亡診断書を受け取る 相続放棄、単純承認、限定承認の決定 相続税の申告
死亡届の提出 準確定申告 遺留分侵害額の請求
火葬許可申請書の提出
世帯主変更届の提出(残された世帯員が2人以上の場合)
国民年金、厚生年金の受給停止の手続き
国民健康保険・介護保険の資格喪失の手続き

【相続手続きステップ1】法定相続人の決定

相続が発生したら、相続人同士で遺産分割を行う必要があります。被相続人と相続人全員の戸籍・除籍謄本等を市区町村役場から取り寄せ、どなたが法定相続人となるのかを決めましょう。

相続手続きのあらゆる場面で、最初に必要となる作業が戸籍上の相続人を確定することです。戸籍上の相続人を確定するためには、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍を取得する必要があります。

【相続手続きステップ2】相続財産の調査

相続財産を確認するために、まずは遺言書の有無を確認しましょう。遺言書があれば、原則としてその通りに遺産を分けることになります。被相続人の遺品を探す他、公証役場の遺言検索も試してみてください。

通帳を確認することで、生命保険契約・年金保険契約の有無、有価証券の保有有無、貸金庫契約の有無、所有不動産の有無なども確認できます。

相続財産の内容に漏れがあると、遺産分割をやり直さなければいけなくなってしまうため、慎重に調査を進めなければいけません。

【相続手続きステップ3】遺産分割協議の開始

遺言書がなく、遺産を相談して分けることになった場合、遺産の全容が確定した段階で、相続人全員で遺産分割協議を行います。相続人全員が合意できたら遺産分割協議書の作成となります。

遺産の分割について相続人同士で決着がつかない場合は、家庭裁判所で調停による分割、または、審判による分割をすることになります。参加が難しい相続人がいる場合は、後見人などの代理人を立てて遺産分割協議を行わなければいけません。

遺産分割協議後に新たな遺産が見つかった場合は、遺産分割をやり直し、その財産についても再度遺産分割協議をすることになります。

【相続手続きステップ4】相続財産の名義変更

相続財産となる預貯金や不動産などの名義変更を進めます。不動産の名義変更手続きは「相続登記」と呼ばれ、この相続登記をしていないと不動産を売買することすらできません。

相続登記は2024年4月から義務化されているため、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に名義変更の手続きを行う必要があります。理由なく登記申請を怠った場合、10万円以下の過料に処される可能性もあるため、できる限り速やかに申請準備を行いましょう。

他の相続人と連絡が取れない場合など、3年以内に相続登記が間に合わない場合は「相続人申告登記」という制度を利用して罰則を免れることもできます。相続人申告登記を完了していたとしても、不動産の所有権を確実なものにするためには正式な相続登記(所有権移転登記)を申請しなければいけません。

相続手続きに必要な書類は、下記の通りです。

▼相続手続きの必要書類 一例

1.被相続人に関するもの

・戸籍謄本

・全部事項証明書(本籍地の市区町村役場)

・改製原戸籍謄本(被相続人の父母等の本籍地の市区町村役場)

・住民票の除票(住所地の市区町村役場・被相続人死亡の記載があるもの)

・戸籍の附票(本籍地の市区町村役場)など

2.相続人に関するもの

・戸籍謄本

・全部事項証明書(本籍地の市区町村役場)

・住民票抄本

・印鑑証明書(住所地の市区町村役場)

・遺産分割協議書など

3.相続財産に関するもの

・登記事項証明書等(物件所在地の地方法務局または出張所)

・固定資産評価証明書(物件所在地の市区町村役場)

・名寄帳

・不動産賃貸借契約書

・不動産の図面(公図など)(地方法務局または出張所)など

4.金融資産に関するもの

・預貯金残高証明書(既経過利息計算書・取引報告書)

・公社債残高証明書

・株式等の明細書など

5.債務等に関するもの

・公租公課納付書(固定資産税、住民税)

・借入金明細書

・葬儀費用明細書など

6.その他財産に関するもの

・生命保険金支払明細書

・退職金支払明細など

【相続手続きステップ5】相続税の申告

相続税申告が必要な場合、相続の発生を知った日の翌日から10カ月以内に申告と納税を行わなければいけません。

相続財産の相続税評価額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、特例制度等により相続税がかからない場合でも申告の必要があります。所得税の準確定申告と併せて早めに税理士に相談しておけると安心です。

基礎控除以外に適用される控除・特例がある

相続税には税額を軽減できる控除・特例があります。基礎控除と併用できるため、どんなものがあるのか確認しておきましょう。

配偶者の税額軽減

被相続人の配偶者が遺産を相続する場合、「課税価格1億6,000万円」もしくは「法定相続分に相当する額」までは相続税が課されないという制度です。配偶者の法定相続分とは、民法で定められた相続割合の目安になります。

例えば、配偶者と子どもが相続する場合、配偶者の法定相続分は2分の1と規定されています。つまり、課税価格が1億6,000万円を超えていた場合であっても、配偶者の法定相続分を超えていない限り、相続税額はゼロとなるのです。

しかし、税額軽減の制度で相続税額がゼロになる場合でも、相続税の申告は必要となります。被相続人の住所を管轄している税務署に必ず申告書を提出しましょう。

小規模宅地等の評価減の特例

新潟県内の遺産相続で多い不動産の相続。「小規模住宅等の特例」は、被相続人が自宅として使っていた土地を親族が相続する場合、一定面積までは相続税の負担を軽減できる制度です。減額される金額は、下記のように計算されます。

▼小規模宅地等の評価減の特例 減額される割合

相続開始の直前における宅地等の利用区分 限度面積 減額割合
特定居住用宅地等 330㎡ 80%
特定事業用宅地等 400㎡ 80%
貸付事業用宅地等 200㎡ 50%

その他にも、被相続人が事業に使用していた土地や、貸付事業(アパート、マンションなど)として使用していた土地も小規模住宅等の特例の対象となります。親や兄弟、親族が所有していた不動産を相続することになった際には必ず活用しましょう。

未成年控除

相続人が未成年の場合、規定の計算式に基づいて相続税を控除することができます。未成年控除の額は、相続人が18歳になるまでの年数につき、10万円で計算されます。

【未成年控除の計算式】

控除額=(18歳-相続開始時の年齢※)×10万円

※相続開始時の年齢に1年未満の期間がある場合は切り捨てる。

未成年者の相続税額から未成年控除の全額を引けなかった場合、扶養義務者の相続税額から残りの額を差し引くことも可能です。

障害者控除

相続人が85歳未満の障害者である場合、相続税から一定の金額を差し引くことができる制度です。

【障害者控除の計算式】

控除額=(85歳-相続開始時の年齢※)×10万円

※相続開始時の年齢に1年未満の期間がある場合は切り捨てる。

一般的な障害者が対象の場合は1年につき10万円、特別障害者の場合は1年につき20万円の控除となります。また、未成年控除と同じく、相続税額から引けなかった障害者控除の一部の額は、扶養義務者の相続税額から差し引くことができます。

相続税は、法定相続人の人数によって決まる

相続税は、基礎控除額を超える価値がある遺産を相続した際に発生するものです。基礎控除額は、法定相続人の人数によって決まり、相続税の対象にはならない財産もあります。遺産を相続したからといって、必ずしも相続税が発生するわけではないため、相続税の仕組みを正しく理解し、申告の必要性を判断しましょう。

相続税の基礎控除額については、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」という算式を覚え、「遺産の総額が基礎控除額を超えると相続税の申告が必要になる」ということだけでも理解しておくと役に立つでしょう。

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