COLUMN

相続の教科書

株の相続手続きにまつわる基礎知識を徹底解説!

株の相続手続きにまつわる基礎知識を徹底解説!

相続財産にはどのようなものが多いか、ご存知でしょうか。国税庁「統計年報」(令和3年度)によると、金額が最も大きいのは「現金、預貯金(34.0%)」「土地(33.2%)」と続き、3番目が株などの「有価証券(16.4%)」でした。

家族が亡くなると、「お父さんが持っていた株はどうやって相続したらいいのだろう」「残された株は現金化した方がいいのかな」と、考える人は意外と多いものです。

気になる株の相続手続きについて、いざという時に役立つ基礎知識を解説します。

株を相続する時の手順

株の相続は、不動産や預貯金の相続とは違う手続きが必要です。最初に、株を相続する時の手順を確認していきましょう。

【大前提!】株の相続には名義変更が必須

相続した株を現金化するためには、名義変更を完了した後、売却手続きを進めます。被相続人(故人)が所有していた株は、そのまま受け取っても引き継いだことにはならず、現金化することはできません。

名義変更の手続きには、証券会社や株券発行会社、信託銀行などの窓口を利用します。

株の相続手続き完了までの4ステップ

株を現金化するためには、次のような4ステップで手続きが進められます。

【STEP1:株の調査】

株には「上場株」と「非上場株」の2種類があり、それぞれに評価方法が異なります。被相続人が株を所有していた場合、まずは株の内容をしっかりと調査しましょう。

上場株は、証券取引所を通して誰でも売買できます。被相続人の残高がどのくらい残っているのかは、証券会社が発行する残高証明書に記載されています。

その一方、証券取引所での扱いがない非上場株は特定の人しか買う事ができません。証券会社の残高証明書にも記載されないので把握しておきましょう。

上場株の調査方法

非上場株の調査方法

・証券会社に取引残高証明の発行依頼をする

・銘柄、数量、時価を確認する

・株式発行会社に残高証明書の発行依頼をする

・株券が発行されない場合、会社へ問い合わせる

【STEP2:株の分割方法を決める】

次に、相続人同士で株の分割方法を決めます。遺言書に分割方法の指定があればその内容を優先しなければいけませんが、遺言書がなければ遺産分割協議を行わなければいけません。

遺産分割協議は、株だけではなく、不動産や預貯金など、相続財産全てを含めて、分割方法を細かく話し合うためのものです。遺言書がない場合、遺産分割協議が成立するまで株などを含む相続財産は全て相続人全員の共有財産とみなされます。

【STEP3:株の名義変更をする】

遺言書や遺産分割協議で株を相続する人が決まったら、名義変更手続きを行います。株の名義変更を行う場所は証券会社です。名義変更の前に、相続人名義の口座を用意しておきましょう。株の名義変更には、主に4つの書類が必要になります。

【株の名義変更で必要になる書類】

・証券会社所定の名義変更依頼書

・戸籍謄本または法定相続情報一覧図

・遺産分割協議書または遺言書の写し

・相続人全員分の印鑑証明書

【STEP4:株を売却して現金化する】

名義変更した株は、自由に売却して現金化できます。上場株の場合は証券取引所を通じて売却することができ、非上場株の場合は会社によって規程が異なるため、確認が必要です。

相続した株を売却すると20%税金がかかる

株を売却して現金化した場合、譲渡益が出れば譲渡所得税が課税される点にも注意しましょう。株式の売却益にかかる所得税・住民税は一律で20.315%(所有期間が5年を超える長期所得の場合。所有期間が5年以下の短期譲渡の税率は39.63%)。相続人は相続税とは別に譲渡所得税を納めなければいけません。

ただし、相続開始の翌日から3年10カ月以内に株を売却した場合は「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」を利用できる場合があります。譲渡所得税を計算する際に、すでに納めた相続税の一部を株の取得費として加算することで、譲渡所得税額を少なくできる特例です。詳しくは国税庁公式サイトをご覧ください。

相続人が複数いる場合の遺産分割方法

相続人が1人であれば、現金・株いずれにおいても、相続手続きをスムーズに行いやすいです。しかし、相続人が複数人いる場合は手続きが複雑になってしまうものです。

相続人同士で株を分割しなければいけない場合、「現物分割」「代償分割」「換価分割」のいずれかで遺産分割を行います。

【株の遺産分割方法】

方法

内容

現物分割

金銭に換えず、株のまま取得する方法。被相続人が保有していた株数によっては、複数の相続人で均等に分けて相続することもできます。

ただし、株式の価格は常に動くため、その後の株価の推移次第では将来の資産評価が大きく変わる場合があります。相続人の間でのトラブルを避けるために、銘柄ごとに株数を均等に分割することも視野に入れておきましょう。

換価分割

被相続人が保有していた株式を現金化し、その売却代金を相続人同士で分割する方法。相続人全員が株式での継続保有を望まない場合などに活用できます。現金化されることによって均等に分割できるのもメリットです。

代償分割

複数の相続人のうち1人が株を相続し、その株を取得した相続人が他の相続人に代償金を支払う方法。

将来の値上がりが期待できる場合に、株を売却する必要がない点はメリットといえます。しかし代償金の用意が必要な点や、どの時点の相続税評価額で代償金額が決まるかで相続人の間でトラブルになる可能性があります。生前に遺言書を作成しておくことも重要です。

株の評価方法をわかりやすく解説

株を引き継ぐ時、株価に応じて相続税が発生する場合があります。評価方法は上場株と非上場株のどちらかで大きく異なります。それぞれの特徴を理解しておきましょう。

株の相続も相続税の対象

相続税は、被相続人から受け継いだ全ての財産に対し、一定額を超えた場合に発生する税金です。基本的には、株も不動産と同じように、現金に換算した時の「相続税評価額」を算出することからスタートします。

株の相続税評価額を計算したら、不動産や現金など、その他の相続財産と金額を合算して、相続財産の総額を算出することができます。遺産総額から借金や基礎控除の分を除いた金額が相続税の課税対象です。

【株の評価方法】上場株の場合

上場株の相続税評価額は、「課税時期の最終価格×保有株式数」で算定されます。ここでいう「課税時期」は、被相続人が亡くなった日のこと。

上場株は経済情勢や会社の業績によって大きく変動するため、相続税申告における上場株の時価は、「亡くなった日」1日だけでなく、過去の傾向を含めて評価することが認められています。

そこで注目したいのが、上場株の4つのタイミングです。この4つの中から、最も低い価格のもので評価が決まります。

  1. 被相続人が死亡した日の終値
  2. 被相続人が死亡した月の毎日の終値の平均額
  3. 被相続人が死亡した前月の毎日の終値の平均額
  4. 被相続人が死亡した前々月の毎日の終値の平均額

原則として、被相続人が死亡した日の終値となっていますが、相場の急変等で評価額が一時的に非常に高くなってしまった場合などを想定して、このような制度になっています。

被相続人が複数の銘柄の上場株を保有していた場合、株式ごとに最も低い金額で評価しましょう。

【株の評価方法】非上場株の場合

株式をマーケットに公開していない非上場株は、会社の規模で相続税評価額の計算方法が決まっています。非上場株の評価方法は主に3つです。

1.純資産価額方式

会社の資産、負債を相続税法が定める一定の基準に基づき相続税評価額に置き換え、資産と負債の差額である純資産を株数で割って、自社株の相続税評価額を計算する方法です。

2.類似業種比準方式

1株あたりの配当金、利益、純資産を、類似業種を営む上場会社の平均値と比較して比準値を出し、これにその上場会社の平均株価を乗じて相続税評価額を計算する方法です。

3.配当還元方式

会社経営に関与しない少数株主(同族株主等以外の株主)が相続や贈与で株式を取得した場合は、配当還元方式で株価を評価します。非上場会社の少数株主は、上場株と違い保有している株を簡単に売却できません。さらに、株主として経営に口出しもできないため、配当をもらうことがメリットになります。

配当還元方式を採用することで他の評価方式に比べて評価額が低くなりますが、今後10年間でもらえる配当金の総額が株式の評価額とされます。

被相続人が自社株を所有していたら

被相続人が会社経営者であり、自社株を保有していた場合、事業承継や会社清算の手続きが必要となります。また、自社株の相続は遺産分割協議で相続人同士の争いが起きてしまったり、相続税や贈与税が高額になってしまったりと、トラブルが起こりやすい側面もあるため細心の注意が必要です。

株の相続で注意するべき5つのポイント

株を相続する際に、いくつかの注意点があります。株取引初心者の方に向け、特に注意するべき5つのポイントをまとめました。株の相続手続きの流れや評価方法と合わせてご確認ください。

株でも売却益には税金がかかる

譲渡所得税や相続税の紹介をしましたが、株を売却することでも税金が発生します。譲渡所得は給与所得や事業所得とは分けて課税され、税率は20.315%です。

譲渡所得は売却代金から取得費と売却時の手数料を差し引いて求められます。なお、売却によって譲渡益が出なかった場合は課税対象とはならず、申告の必要もありません。

準確定申告を忘れずに行おう

被相続人が株式取引をしていた場合、亡くなってしまった場合も確定申告をしなければいけません。この場合、本人は死亡しているため、相続人が被相続人に代わって「準確定申告」することになります。

準確定申告には「相続開始後4カ月以内」という期限があります。また、準確定申告で申告する収入には、株の配当金も含まれます。配当金を生前に受け取っている場合は、被相続人の収入として準確定申告を行いましょう。

株の売却はタイミングに注意

株は値動きが大きいため、売却にあたっては直近の値動きを確認しましょう。相場を調べずに売却してしまうと、損をしてしまうことも予測できます。焦ることなく、極力評価額が高くなったタイミングで売却することが重要です。

相続人が相続放棄した場合

相続人の誰かが相続放棄をすると、その相続人は相続人ではなかったことになります。その相続人を除く他の相続人は遺産分割協議を行い、相続方法を決定していきます。

相続放棄は、相続が開始したことを知ってから3カ月以内なら問題なく適用されます。被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申述書を提出し、それが受理されることによって認められます。相続放棄は誰にでもできることを知り、突然相続放棄をしたとしても慌てることなく対応できるように心がけましょう。

株の相続手続きは放置NG

株の相続手続きが完了しない間、株は相続人全員の準共有状態となります。準共有の状態で議決権などの株主権を行使するには相続人のうち1人を「権利行使者」として定め、株式発行会社へ通知しなければいけません。

配当金は受け取るたびに相続人同士で分配するなどしなければいけないため、大きな負担がのしかかってきます。手間が余計にかかってしまうため、株の相続手続きは早め早めに完了しておきましょう。

株の相続は不動産や預貯金とは進め方が異なる点に要注意

株の相続は、預貯金や不動産の相続とは評価の仕方や進め方が異なります。相続発生後にわからない点が多いと、相続税の申告期限までに手続きが完了できない恐れがあります。取引が続いている証券会社やおおよその評価額を確認することで、少しでも利益になる相続手続きを実現しましょう。

株や投資信託などの有価証券を相続する際には、遺産分割協議から名義変更手続まで、各ステップでの慎重な対応が求められます。相続に関するお悩みは、相続のプロに相談できると安心です。

新潟相続のとびらでは、新潟で暮らす皆さまの相続のお悩みに寄り添い、未来のとびらを開く選択肢を、相続の専門家として幅広くご提案させていただきます。

ご相談は、下記のフォームからお気軽にお問い合わせください。

▼お問い合わせ・ご相談はこちら
https://www.souzoku-tobira.com/contact/

ご来社いただける場合、
初回相談はすべて無料です。

お問合せ・
ご相談はこちら

ご来社いただける場合、初回相談はすべて無料です。

お問合せ・ご相談