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相続の教科書

相続手続き

相続登記はなぜ義務化されたのか?気になる罰則内容やリスクを解説

相続登記はなぜ義務化されたのか?気になる罰則内容やリスクを解説

相続登記の義務化が2024年4月から始まりました。これまでは相続登記を行わなくとも罰則は科されませんでしたが、現在は相続登記を放置してしまうと過料の対象となります。

法改正はなぜ行われたのか。その背景にある社会問題についてご説明すると共に、法改正後の罰則内容や相続登記を行わないと発生するリスクについても解説していきます。

相続登記の基本知識と手続きの流れ

相続登記は、家族や親族が亡くなった時に必要となる手続きです。相続の予定がある人にとって知っておくべき「相続登記の基本知識と手続き」について説明します。

相続登記とは

相続登記は、亡くなった方(被相続人)が所有していた土地・家・マンションなどの不動産を相続した際に必要となる不動産の名義変更です。不動産登記は法務局の登記簿によって管理され、「どこにどんな土地・建物があるのか」「担保としてどこからいくらの借り入れがあるか」といった情報が記録されています。

不動産登記は、該当する不動産の権利を明らかにする制度であり、不動産売却や利活用、担保に入れる際にも必要となります。また、相続手続きの中で出てくる「法定相続人」とは、被相続人の遺産を相続できる配偶者と血族を指します。

※「法定相続人」の範囲・順位・確認時の注意点については、こちらのコラムで詳しく解説しています。

相続登記に必要な書類

相続登記に必要となる基本的な書類は、下記の8点です。

  • 被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本
  • 被相続人の住民票の除票
  • 相続人全員の戸籍謄本、住民票
  • 法定相続人の印鑑証明書
  • 登記申請書
  • 不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 遺言または遺産分割協議書
  • 固定資産評価証明書

遺言の有無や遺産分割の方法によって必要書類は変わります。パターン別に必要書類をご確認ください。

1.遺言書がある場合の必要書類

被相続人による遺言書があり、法定相続人が相続をする場合、遺言内容通りに相続登記を申請します。

 

対象者

書類の名称

入手先

有効期限

備考

必要書類

被相続人

自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言のいずれか

自筆証書遺言:自宅等又は法務局

公正証書遺言:公証役場

秘密証書遺言:自宅等

なし

自筆証書遺言書の場合は以下2点に注意ください。

① 法務局に保管されている場合は、「遺言書情報証明書」が必要です。

② ①以外の場合は、家庭裁判所での検認が必要です。

・戸籍謄本(戸籍事項証明書)

・除籍謄本

・改製原戸籍

本籍地の市区町村

なし

出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要です。

住民票の除籍または戸籍の附票

住民票の除票:住所地の市区町村

戸籍の附票:本籍地の市区町村

なし

登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの

※「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本」等に記載された本籍と異なる場合に必要となります。

新しく所有者になる方

戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)

本籍地の市区町村

なし

亡くなられた方の死亡日以降に発行されたもの。

固定資産課税明細書

毎年4月頃に市区町村から送付

なし

登記申請をする日の属する年度のものが必要です。

住民票

住所地の市区町村

なし

 

2.遺産分割協議の必要書類

遺言書がない場合や、相続人が複数いる場合、相続人全員の話し合いによって割合を決める「遺産分割協議」によって遺産分割を決められます。成立させるためには、相続人全員の合意が必須です。

 

対象者

書類の名称

入手先

有効期限

備考

必要書類

被相続人

・戸籍謄本(戸籍事項証明書)

・除籍謄本

・改製原戸籍

本籍地の市区町村

なし

出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要です。

住民票の除籍または戸籍の附票

住民票の除票:住所地の市区町村

戸籍の附票:本籍地の市区町村

なし

登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの

※「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本」等に記載された本籍と異なる場合に必要となります。

法定相続人

戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)

本籍地の市区町村

なし

亡くなられた方の死亡日以降に発行されたもの。

印鑑証明書

住所地の市区町村

なし

遺産分割協議書に押印された印鑑に関するもの。

固定資産課税明細書

毎年4月頃に市区町村から送付

なし

登記申請をする日の属する年度のものが必要です。

法定相続人のうち、新しく所有者になる方

住民票

住所地の市区町村

なし

 

3.法定相続の必要書類

法定相続分は、民法900条に定められた内容に沿って相続登記の申請をすることです。遺言書がなかった場合や遺産分割協議がまとまらなかった場合に用いられます。

 

対象者

書類の名称

入手先

有効期限

備考

必要書類

被相続人

・戸籍謄本(戸籍事項証明書)

・除籍謄本

・改製原戸籍

本籍地の市区町村

なし

出生から死亡まで、在籍していた全ての戸籍・除籍謄本が必要です。

住民票の除籍または戸籍の附票

住民票の除票:住所地の市区町村

戸籍の附票:本籍地の市区町村

なし

登記簿上の住所及び本籍地の記載のあるもの

※「被相続人の登記上の住所」が「戸籍謄本」等に記載された本籍と異なる場合に必要となります。

法定相続人

戸籍謄本(抄本)(戸籍事項証明書)

本籍地の市区町村

なし

亡くなられた方の死亡日以降に発行されたもの。

固定資産課税明細書

毎年4月頃に市区町村から送付

なし

登記申請をする日の属する年度のものが必要です。

住民票

住所地の市区町村

なし

 

参照:法務局「相続による所有権の登記の申請に必要な書類とその入手先等」

相続登記の手続きの流れ

相続登記の手続きは、主に5つのステップで行います。

step.1相続する物件の特定

まずは被相続人が所有していた不動産を特定する必要があります。自宅やオフィスの他、家族が把握していなかった投資物件を所有している場合もあります。土地と建物は別の不動産として登記されている点にも注意しましょう。

step2.相続登記に必要な書類を収集

相続登記に必要となる、被相続人の戸籍謄本、住民票の除票などを取り寄せます。登記申請書は、法務局公式ホームページからダウンロードできます。

step3.相続人の確定

被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を確認した後、相続人を確定します。

step4.(必要な場合)遺産分割協議書の作成

遺産分割協議による相続登記を行うためには、財産を誰が取得するのかを相続人同士で話し合い、所定の方法で遺産分割協議書を作らなければいけません。作成した遺産分割協議書は、申請書類として添付します。

step5.申請書の作成・申請

相続登記は、不動産の住所地を管轄する法務局へ行き、登記申請書と添付書類一式を提出し、申請します。登記申請には登録免許税の納付が必要になるため、収入印紙を購入して申請書に貼り付けましょう。書類の審査と登記には、1週間から10日ほどかかります。

相続登記には「単独名義」と「共有名義」がある

相続登記は、1人で相続することを「単独名義」、2人以上で相続することを「共有名義」といいます。単独名義と共有名義の違いは、不動産の活用のしやすさにあります。 単独名義の不動産は、自身の意思で売却や改築ができますが、共有名義では売却はもちろんリフォームや修繕も勝手に行うことはできません。

相続登記の申請にかかる費用

相続登記には、主に4つの費用がかかります。

  • 不動産の調査費用:0〜2千円
  • 必要書類の収集費用:数千円〜3万円ほど
  • 登録免許税(登記を申請するときに国に納める税金):固定資産税評価額の0.4%
  • 司法書士報酬:5万〜15万ほど

相続登記では、戸籍謄本など各種証明書を添付書類として提出します。必要書類の取得費用が一通数百円かかる他、自宅に不動産資料がなかった場合の調査費用、相続登記を申請する時に必要となる「登録免許税」、司法書士に依頼する場合は報酬の支払いも状況に応じて必要となります。

相続登記の義務化は空き家対策の一つ

相続登記が義務化された背景には、深刻化する空き家問題が深く関わっています。

相続登記は2024年4月から義務化

相続登記は、2024年4月1日に施行した改正不動産登記法によって義務付けられました。これは、所有者が特定できない空き地や空き家が増えて、適切な対応ができず、将来的にトラブルが起こるのを避けるために政府が決定した措置です。

これまで任意だった相続登記を義務化することで、空き家問題の解決に向けた対応が強化される形となりました。

相続登記義務化による罰則

相続登記が義務化されたことで、正統な理由がなく相続登記をしなかった場合は10万円以下の罰金を課せられる可能性があります。また、24年4月1日以降に発生した相続は、相続の発生を知った日から3年以内に申請が必要です。相続の発生が24年4月1日以前の場合は、2027年3月末が登記期限になります。

相続登記の義務化と同時にスタートした「相続人申告登記」

不動産登記法が改正され、「相続人申告登記」という制度も新設されました。これは、簡易的な申請で相続人としての義務を履行できる、すぐに相続登記が完了できない人には嬉しい制度です。

相続登記をはじめ、相続手続きは難航することも十分に考えられます。「相続人が多く、話がまとまらない」「相続人の調査に時間がかかっている」など、期限内での申請が難しい状況に陥ってしまったら、相続人申告登記を活用して罰則を回避しましょう。

相続登記を放置すると発生する5つのリスク

相続登記を怠ってしまうと過料を払わなければいけないだけでなく、将来的に大きなリスクを招く可能性があります。相続登記を行わずにいると生じる5つのリスクについて説明します。

権利関係が複雑になってしまう

相続登記をしないまま相続人の誰かが亡くなってしまうと、次の遺産相続が開始されます。相続登記を先延ばしにした結果、相続人の数が増えていくと権利関係は複雑化してしまいます。相続人の間で面識がない、連絡先が分からないという場合は、遺産分割協議を行うことさえ困難です。

相続登記を放置し過ぎてしまうと、専門家であっても対応できない事態になってしまいます。また、遺言書を作成している場合は早めに相続登記をしましょう。相続登記をしないまま次の相続が発生すると、遺言が部分的または全体的に無効になってしまうリスクが発生します。

相続した不動産が売却できなくなる

相続登記が未完了の所有者不明土地や不動産の名義が被相続人のままの不動産は、売却することも、担保にしてローンを組むこともできません。売却を考えている場合は必ず相続登記を行いましょう。

相続登記を行う前に売却できたとしても、被相続人名義のままでは買主名義に変更する所有権の移転登記ができません。

相続人の間でトラブルが発生しやすくなる

相続登記を怠ると、相続人同士で相続した不動産の管理責任や義務を巡るトラブルが発生しやすくなります。住宅の老朽化や庭木の侵入による近隣トラブルなどを引き起こす前に対処しましょう。

他の相続人の債権者から不動産を差し押さえられてしまう

相続人の中に借金を抱えている人がいる場合、相続人の中の債権者(お金を貸している人)が相続財産を差し押さえることも考えられます。相続登記がされていないと、債権者が代わりに相続登記(代位登記)を行い、差し押さえることができてしまうのです。これによって、不動産が競売にかけられるリスクが生じてしまいます。

固定資産税が高額になる

相続登記をしていない場合でも固定資産税の支払いが発生します。固定資産税は、その年の1月1日時点で不動産を所有している人に課される税金です。被相続人が所有していた不動産は、登記申請が完了するまでは相続人全員の共有財産として扱われ、固定資産税の納税義務は相続人全員に課せられます。

税負担が増えるだけでなく、結果的に相続者同士の争いも引き起こしてしまう可能性があるため、自治体から勧告を受ける前に状態の改善を図りましょう。

相続登記は放置せず、3年以内に必ず申請を!

2024年4月から相続登記が義務化され、相続による不動産取得後3年以内に登記を行わなければ10万円以下の過料対象となります。法改正以前の不動産も義務化の対象なので、不動産を相続したら早めに不動産の登記謄本を確認しましょう。

相続登記を放っておいても、不動産を売却できない上に税金の支払いも発生するなど、デメリットしかありません。専門的な知識を要する相続登記は、相続のプロと一緒に乗り切ることもできます。

新潟相続のとびらでは、新潟で暮らす皆さまの相続のお悩みに寄り添い、未来のとびらを開く選択肢を、相続の専門家として幅広くご提案させていただきます。

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